この記事を読むことで、ビタミンEそのものがアトピー性皮膚炎に対してどのような有効性があるかをすることができる。その結果、サプリメントを選択する上での知識を得ることができるようになる。
目次
背景
アトピーに良い栄養素やサプリメントの情報が多く報告されている。しかし、その詳細がきちんと伝わることのないままにいることが多く見受けられる。そこで、それぞれの栄養素の効果及びアトピー性皮膚炎に対する影響にに対する報告を調べ、まとめることになった。
アトピー性皮膚炎で起きる炎症反応とは
多くの疾病が酸化的ストレス由来の活性酸素によるものと考えられるようになった.過酸化傷害により誘引される炎症反応はアラキドン酸代謝産物が関与していると考えられる.シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸カスケードにおいて,非常に重要な酵素であり,このホメオスタシスの異常が炎症に関与する.(2)
アトピー性皮膚炎に対するビタミンEの研究報告
- 間接的に免疫抑制
- COX抑制効果
- 遺伝的な面から免疫を調製
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臨床経過および免疫グロブリンE血清レベルの評価
COX抑制効果
5週齢NCマウス雄に炎症惹起物質であるピクリルクロライド溶液を塗布し,ハプテン塗布群とした,また4週齢NCマウスに2Uに1度VEを200mg/kg腹腔投与を1週間行った.マウス断頭後,背部皮膚を採取し,各群におけるCOX−1,COX−2活性の変動を調べ,またTBARS,LOOH量を過酸化傷害の指標として定量を行った,
皮膚中のTBARS,LOOH量共に顕著に高値を示し,COX活性の亢進がみられた.VE投与群において,これらの上昇が抑制される傾向が得られた.(1)
間接的に免疫抑制
ROSによるマスト細胞の攻撃が,抗体の異常分泌を促します.なので,直接ROSにEが作用し,間接的に免疫抑制を行う。(2)
遺伝的な面から免疫を調製
EがT細胞とB細胞に直接作用しIL−4などのサイトカイン生産を抑制することで、形質細胞への分化を防いでIgEなどを抑制する点.そして,TNF一αをEが抑制することで,ROSを抑制し,それに伴いNF・κB産生の抑制をEが間接的に行い,NF・κBの核内移行を抑制し,遺伝的な面から免疫を調製する作用する。(2)
臨床経過および免疫グロブリンE血清レベルの評価
アトピー性皮膚炎を有する96人の被験者におけるプラセボ(PL)およびVE摂取量(400 IU /日)の主観的症状および血清IgEレベルに対する効果を比較。結果、VE群のアトピー性皮膚炎の改善および寛解が大きい被験者は、初期状態に基づいて血清IgEレベルが62%低下したが、PLを摂取した被験者では約34.4%であった。どちらの群でも合併症は認められなかった。顔面紅斑、養生、および明らかに正常な皮膚の存在の顕著な改善が報告された。湿疹病変は主に痒みの減少の結果として治癒した。(3)
ビタミンEのサプリメントについて
- ビタミンEの体内動態
- 抗酸化効果
- 免疫賦活効果
- 抗炎症効果
ビタミンEの体内動態
ビタミンEは,生体における主要な脂溶性抗酸化物質であり,おもに生体膜中に存在して,不飽和脂肪酸の過酸化反応を防止する生理作用を有している。(6)
ビタミンEは8つの種類に分かれている。天然にはα-,β-,γ-,δ-トコフェロールと,それに対応するトコトリエノール類の計8種のEの同族体が存在する。それぞれ生理活性の異なることが知られている.この理由について,吸収率や体内での代謝速度の異なることが報告されている。
ビタミンE同族体は,同族体の区別なく小腸から吸収されてキロミクロンと結合し,リンパ,血中を通って肝臓に輸送される。肝臓では,α一TTPとの親和性が最も高いα一トコフェロールが選択的にVLDLに組み込まれて血中に放出され,末梢組織へと運ばれる。一方,α一TTPとの親和性の低い他の同族体は,そのほとんどは他の組織に運ばれることなく胆汁中へ排泄されるか,代謝産物となって尿中へ排泄されると考えられる。
α一TTPに 対 す る ビ タ ミンE同 族 体 の 親 和 性 は,α 一ト コ フ ェ ロー ル を100%と した 場 合 に,γ 一トコ フ ェロ ー ル が9%,α 一ト コ ト リ エ ノー ル が12%で あ り11),γ 一ト コ フ ェ ロ ー ル と α一トコトリエノールはともに体内に留まりにくいと考えられる。
ところが,ラットにトコフェロールとトコトリエノールの混合飼料を8週間摂取させたところ,α一トコフェロールはどの組織にも高濃度に存在し,γ一トコフェロールはどの組織にもほとんど検出されず,トコトリエノールは,主要な組織中にはほとんど検出されなかったが,脂肪組織と皮膚に高濃度に蓄積されていた。(6)
抗酸化効果
Eの主要な生理活性は,フリーラジカル・活性酸素に対する抗酸化作用である。
生体中ではEの酸化代謝物がことのほか少なく,α―トコフェルリキノンを除き,純化学的に酸化反応させて得られるEの酸化生成物が見当たらない事実は,EがO2や・OHなどのフリーラジカルとは直接反応せず,むしろ二次的に発生した脂質ラジカルを消去している。ビタミンCやユビキノールとEの間にラジカル交換が行われ,もとのEに再生される。
この様な相互作用は,低密度リポ蛋白質(LDL)の表層における脂質過酸化に対しても行われる。(4)
免疫賦活効果
ビタミンAやC等と共に,Eには免疫賦活作用があるものとされている。
乏動物では抗体産成が低下して免疫反応の障害を来たし,E投与によって抗体産生能,特にIgGの産成が増大する。IgGの産成にはヘルパーT細胞の寄与が必要なため,Eは胸腺由来のヘルパーT細胞の成熟を促して,Bリンパ球の抗体産成細胞への分化を賦活化するためと説明されている。一方,細胞性免疫においても,EはT細胞を活性化してこれを増強する。
抗炎症効果
ヒト表皮角化細胞であるHaCaT細胞に紫外線B波(UV−B)を照射後,トコトリフェロール(T3)とともに培養した.炎症性サイトカインであるプロスタグランジンE2(PGE2)産生量を調べ,PGE2産生酵素であるシクロオキシゲナーゼ・2(COX−2)などの遺伝子とタンパク発現量を評価下研究によって、T3によりUV−B照射で誘導された炎疽性遺伝了一が抑制された(7)
サプリメントを吸収するために
ビタミンEは脂溶性のビタミンです。ですので、サプリメントを摂取する際に気をつけるのは、「あぶらの吸収がしっかりできるか」ということです。食事をする際には、胆汁の分泌を促すために、胃酸が十分に出る必要がある。もし、胃腸機能の低下や胃酸抑制材によって胃酸の分泌が抑制されている場合には、サプリメントを摂取してもうまく吸収できないことも考えられる。
この記事のまとめ
ビタミンEは抗酸化の効果で有名な脂溶性のビタミンである。その吸収には、胃腸機能やタンパク質の輸送が関与してくる。また、ビタミンEそのものの働きとして、免疫賦活などの効果も報告されており、アトピーをはじめとする炎症性疾患の治癒に有用である。サプリメントの効果効用を理解して、正しく選択できればアトピーをはじめとする免疫系疾患の改善の手立てとなる。
参考文献/論文
アトピー性皮膚炎モデルマウスにおけるCOX活性の変化とビタミンEの抑制効果(1)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/76/3/76_KJ00000932520/_pdf/-char/ja
アトピー性皮膚炎の病態サイクルと生化学的変化,ビタミンEによる抑制(2007 年 81 巻 12 号 p. 639-640)(2)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/81/12/81_KJ00004806819/_pdf/-char/ja
アトピー性皮膚炎の治療におけるビタミンEの食事摂取量の評価(3)
ビタミンEの生理活性―抗酸化作用を越えて―(4)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln1992/8/1/8_1_37/_pdf/-char/ja
ビタミンE同族体の生理活性に関する研究(1979 年 53 巻 7 号 p. 267-268)(5)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/53/7/53_KJ00001705283/_pdf/-char/ja
抗酸化ビタミンの体内動態とその生理作用(2005 年 58 巻 6 号 p. 343-350)(6)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/58/6/58_6_343/_pdf/-char/ja
トコトリエノールの紫外線惹起皮膚炎症に対する抑制効果(7)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/83/4/83_KJ00005489225/_pdf/-char/ja